浸透圧

好きなものを好きと大いに言い、自分内の流行り廃りや自分自身を整理整頓したりもする、日々の徒然。

私は如何にして怖がるのを止めてホラー映画を愛するようになったか

慶應から連絡が来ました

 入院日は6月13日で決定だそうです。午前中には病棟に行かないといけないので結構早起きしなきゃいけませんが、前のエントリーでの宣言通り、てっぺん廻ってから「ザ・ブルード」を観るというミッションは完遂しますよ、意地でも。入院なんかに私の13金のお楽しみを邪魔されちゃ名折れってもんです。いや、どこのどんな名だと突っ込まれると返答に困りますが。

 それにしても、偶に不図我に返ると、なんで自分はこんなにホラー映画に拘るんだろうなぁと思わなくもありません。そもそも私はとっても恐がりのビビリです。新・耳袋とか、半端にリアル感があって日常的だったりする怖さがめっちゃ苦手で、お化け屋敷も泣く程苦手です。特に生身の人間が脅しにかかってくる奴、ガチで泣きます。まだ仕掛けなら、慣れ親しんだホラーの文脈から、この辺で来るかな?あぁ来た来た、っていうのがわかるんでマシといえばマシですけど、人間の動きは読めないじゃないですか。

 ホラーにしても吃驚モノには結構弱いです。それこそ初代13日の金曜日のラストとか、キャリーのクレジット後とか、初めて観た時は床から3センチは飛び上がりましたね。今は大概ホラーに関してはすれっからしになったので、「あぁはいはいこのパターンね」とか余裕も持てますけど、それにしても相当自分は恐がりだと思います。

 

刷り込みとは恐ろしいもんです

 ホラーと言えるかどうか判りませんが、恐怖映画という意味では間違いなくもの凄く恐ろしい映画「ジョーズ」を、母親に連れられて三歳位で映画館で見せられたんですよね。ギャン泣きしましたよ、そりゃあもう。あんなもん子供に見せるなと思いますけど、考えたらうちの母はホラーは苦手な癖にパニック物は結構好きだったんですよね。ポセイドンアドベンチャーとかタワーリングインフェルノとかエアポートシリーズとか、全部彼女の録画で観てますから、私。

 幼児期にそんなトラウマを植え付けられたもんですから、母曰く「ジョーズが出る」といって相当大きくなるまで海水浴に行っても海に入りたがらなかったそうですし、これは未だにですが、足の付かない深さの水底の方の昏さがめっちゃ怖いです。5m程度の深さのプールでも、丁度真ん中にいて手の届く所に何も掴む物がない状態だと背筋がぞわぞわして早々に逃げ出したくなります。

 しかしとっぱしでそんな恐ろしい体験をしていて、世代的には世界的に徐々にホラーがオカルトからスプラッタへ、スプラッタからスラッシャーへとどんどん移り変わって行っている流れと同時に成長してましたから、都度エポックメイキング的な作品をきちんと押さえている辺りで、素地はちゃんとできていたのだと思います。

 

テレ東の東横のれん街枠

 私が幼い頃母は働いていましたから、学校の長期の休みになると終業式の日に母の実家に連れて行かれ、始業式の前日に帰ってくる、と言う位がっつり祖父母の所に長居をしていました。かといって祖父母も内職などしており四六時中子供を構いつけてはいられないので、基本私は放置され気ままに犬と遊んだり、喫茶店をやっていた叔父の所から要らなくなって送られてくる雑誌色々の山(ジャンプサンデーマガジンからスピリッツ、果てはプレイボーイやペントハウスまで各種取り揃えでした。私が無駄にませたのはそれらのせいも大きかったと思います)を崩したり、後はTVを観ていたりと、フリーダムに過ごしていました。

 母の実家は山梨でチャンネル数は東京より少ない筈ですけど、何故か昼一時代から始まるテレ東の一時間半の映画枠は放映されていました。今にして思えば山梨で放映していたのが全てテレ東ののれん街枠ソースだったかどうかはわかりませんが、かかってたものの系統としては似たような物だと思って下さい。

 あの枠って基本ウェスタン(マカロニ含)とかB級映画の宝庫でしたから、知らないうちに私は映画秘宝系の英才教育をされていたことになります。

 クリストファー・リー様のドラキュラも初めて観たのはあの枠でしたし、ハマーフィルムや昔のユニバーサルの映画は悉くあの枠で観てた筈です。ピラニア以降の便乗作で箸にも棒にもかからんしかもバッドエンドでしょうもない感じのバラグーダというパニック物と見せかけて実はサスペンスだったみたいな映画があるんですけど、私多分同じ枠で2回位観てます。悪魔の棲む家(ナンバリングだったか初代だったかはちょっと定かでないですが)に至っては3回は当たりました。 

 

トドメはお受験時の家庭教師

 私は中学お受験組で小学生の頃から家庭教師の大学生が付いてました。母親の従兄弟の学友だったその人は、何年か私のお勉強を見てくれる傍ら、あらゆる方面で私に多大な影響を与えた人ですが、そのうちの一つが間違いなくホラー映画です。

 彼がこれ面白かったよ、といって貸してくれたのは「エイリアン」だったり「SFボディスナッチャー」だったり「遊星からの物体X(オリジナル版)」だったり「エルム街の悪夢」だったり、まぁ勿論一つもハズレはありませんでしたが、小学生にそれはどうなのよお兄ちゃん、と今だったら突っ込む所です。そういえば、「蠅男の恐怖」と共に「ザ・フライ」を教えてくれたのも彼でした。大先生との出会いも、彼なくしてはなかった訳ですねぇ。

 その頃にはプライムタイムでホラーもまだかかってた世間様でも、オカルトの金字塔であるオーメンだのエクソシストだのポルターガイストだの、そして時代はゾンビへと突入し、終末感漂う映画がやたら流行った時期もありましたよね(ザデイアフターとか)。ジャーロからオカルトへ転んだアルジェントのサスペリアのCMはCM(決して一人では観ないで下さいっていうあれですね)だけでお茶の間を凍らせましたし、なんというか、一人のB級ホラー好きボンクラを作り上げるには充分な環境であったと思います。

 

映画は大好きですが

 当然のように娯楽としてみているので、教養的に名作を観るとかいうことは殆どしたことがありません。ですから私は「映画ファン」を名乗ったら普通の映画ファンの方に怒られそうな位、基本中の基本である名作を当たり前のように観ていなかったりします。「天井桟敷の人々」とか「12人の怒れる男」とか「バニシングポイント」とか「街の灯」とか、普通に観てろよその辺は、っていうか普通に生きてればどっかで観るだろ、というようなものを悉くすり抜けて生きてきてます。

 多分、比較的早くから「良いなと思った作品の監督をチェックして監督で映画を観る」という癖を付けてしまったせいはあると思います。役者で観てると、例えばイングリット・バーグマン綺麗だなって思ったら当然カサブランカ誰がために鐘は鳴るも観る事になるでしょうが、エルム街の悪夢をみて、ウェス・クレイブン良いなと思ったらそりゃー碌なことになりません。役者で観ると外すこともあるけれど監督ならハズレが少ないと、早くに知ってしまったのは幸か不幸かですねぇ。

 ただ、これは私の大好きなクラシック音楽とかオペラとか和歌とか古典にも言える事なんですけど、そもそもの発端が娯楽であったものはやっぱり娯楽であって、殊更にそれを知識や教養として言挙げするのはナンセンスだと割と私は思っている上に、この歳にもなっちゃえば今更知識や教養がないことがなんなんだ、というか、物を知らないことを恥ずかしいとかは特に思わなくなってきちゃっているので(人類の持ちうる知識や情報の量を鑑みたら知らないことが多いのなんか当たり前ですもんね)、ボンクラ加減に拍車はかかっても踏みとどまらせる物は何もないといった有様です。

 まぁそもそも3歳でジョーズを見せられてる時点で、私にアカデミズムやアート志向は近づきようもないですよね。ですからなんの痛痒も覚えることなく、どうやってもA級映画群様には入れても頂けないホラー映画を、こうしてこよなく愛していられるといった次第です。