浸透圧

好きなものを好きと大いに言い、自分内の流行り廃りや自分自身を整理整頓したりもする、日々の徒然。

過食と糖尿の狭間で

調整食にしてから退院まで

 二度目の手術までには何が何でもHbA1cの値を下げなければいけない、更に腹腔鏡下手術という術式なのでお腹の脂肪が厚いとそれだけで手術自体がもの凄く大変になるから、可能な限り体重を落としてくれ、と言われてから、調整食がかなりきちんとした物で尚かつ間食という多少の甘い物を含んでくれていたので、嘘のように過食の傾向は引っ込んでいました。結果、主治医に上記のことを言われてからピーク時と比較すれば10kg程度は体重が落ち、お陰でHbA1cは少し基準値より高いけれど充分に手術が可能な値に、血糖に至っては低血糖の域に入りそうな程まで落とすことが出来ました。

 そんな訳で、手術も無事に終わり、退院したその日こそ「ずっと退院するまでは、手術が終わるまではって我慢してたんだから一個だけ><」と言って、自分へのご褒美的にショートケーキを一つ買って食べましたけど(基本的に私の中では「甘い物が食べたい」というのは常に通奏低音として流れています)、それ以上は比較的何事もなく(全くなかった訳ではないのは後述)、一ヶ月後の、摘出した子宮や卵巣を精密な病理検査にかけた結果が分かる再診の日まで、大人しくしていられました。

 唯一過食発作を起こしたのは手術後のベルカントのレッスンの直後、これは掻爬の手術の後からずっとだったので手術時に麻酔の管を喉へ挿管した影響だったのかもしれませんが、兎に角高音が迷子になったきりで、一度は出来ていたものが、頭で理屈はわかっている、やり方もいい加減躰が覚えたはず、ということが全く迷子になってしまっており、ソプラノ域の声が全く出なくなってしまった時です。掻爬の術後は直後にレッスンを受けていましたからまだ影響が抜けていなかったのかも知れないと思い、二度目の手術の後は大事をとって少し長めにお休みしてから復帰したのに変わらずその状態だったので、「このままずっとこうだったら、二度と戻らなかったらどうしよう。メゾ域が全く出ない純粋なソプラノ声質なのに高音が出ないとか、全くの役立たずじゃないか」という強い不安で、一度過食発作を起こしました。

 ただ、後から考えてみれば、あんなのは序の口だったんですね。スーパーに買い物に行って全く不必要な6個入りの和菓子詰め合わせを籠に入れてしまって、食べちゃ駄目、戻さなきゃ、と思いながら棚に戻すことができず、そのまま買って帰ってきてしまい、半分の3個食べて一旦冷蔵庫にしまったんですが、夜寝る頃になって「まだ3個ある」という言葉がまるでシンジの「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」のようにエンドレスリピートされ、耐えきれずに結局残りの3個も完食してしまいました。この辺りが地獄のとば口だったかもしれません。

 

きっかけは再診での「良い結果」

 術中病理検査では摘出した子宮の状態について「腺癌の筋肉への浸潤有り(慶應ガイドラインの場合浸潤があった場合卵巣と場合によってはリンパ節の切除が必要)」と上がってきていたそうですが、執刀医である主治医が実際に病理まで顕微鏡を見に行って、この程度であればリンパ節の切除の必要は、詳細病理の結果必要ない可能性が五分五分、だとしたら今取って取っただけ無駄になるより、もの凄く緊急性と危険性が高い訳ではないので現時点では温存しよう、と判断してリンパ節の切除はしないでおいて下さいました。

 そして非常に幸いだったことに、精密な病理検査の結果はやはり、筋肉への癌細胞の浸潤はなく、従ってリンパ節の切除は必要ない、という結果でした。つまり、その結果が出た時点で、私の腺癌騒動は一応の一区切りを迎え、後は様子見で再診を定期的に受診する、というのでOKということになった訳です。二つ前のエントリーでも書いていますが、その「良い結果」が結果としては酷い過食を引き起こす引き金となりました。

 

「躰」が治った瞬間に、止めていた「心」が激動

 元々去年の夏からずっと働いていない訳ですから、所詮派遣社員でしかも浪費家でもある自分にさしたる蓄えがある訳でなし、経済的には完全に親頼りという状態が、いい歳をした大人としての罪悪感で心苦しくも、また欲しい物も思うように買えないという単なる抑制心のない我が儘によりストレスフルでもありました。ですから就業に関する焦りはもの凄く強かった訳です。

 ただ、自分の心身の状態を鑑みて、今まで通り九時五時月金のフルタイムの職場に復帰することはやめた方が良いという他人様からのアドバイスに自分自身も納得していましたから、だとしたら自分に出来ることはなんだ、この先のセカンドキャリアをどう考えればいい、という、五里霧中で手がかりすらない悩みもありました。

 それらを、「今は兎に角躰を治すことが先決。この状態で何を考えたって何が出来る訳でもない。一旦それらのことは括弧に括って横に置いておこう」と決め、全く考えないようにして治療に励んでいたのですが、いざ「もう大丈夫ですよ」と言われた瞬間、その横に置いていた物達が一斉に私に襲いかかってきました。

 元々私の過食は強い不安感、焦燥感、もしくは激しい憤怒(この場合は食べるよりODと飲酒になる方が多いですが)によって引き起こされることが多く、その時今まで経験したいつの過食と比べても明らかに自分で異常とわかる過食発作に数回襲われました。

 夜中に部屋着同然の格好で財布を持ってコンビニへと飛び出し、財布の中にある金額ぎりぎりまで、目についた甘い物を片っ端から籠に入れ、それを帰ってきて一気に全部食べてしまう、などと言うことは流石にそれまでの過食発作で経験したことがありませんでしたし、そんなことを数回も繰り返せば、体重はそりゃ増えますとも。順調に減らしてきていたものが一気に3kg位戻ってしまいました。そうなると当然血液検査の血糖やHbA1cコレステロールにも影響するでしょう。

 実は、「リンパ取らなくて大丈夫ですよ」と言われた再診の日の数日前に、普段かかっている近所の内科主治医の所へ薬を貰いに行って採血をして頂いていて、慶應の再診の前にその採血の結果を聞きに行っていました。その際かなり数値が良かったというか、今まで問題だった所が殆ど問題ないレベルにまで下がってきていたので、朝二錠飲んでいた高脂血症の薬と、朝晩二錠ずつ飲んでいた糖尿の薬を、半分にしてみよう、と主治医の先生からご提案を受けました。

 しかしそのお話の直後の慶應婦人科再診の後に上記の有様ですから、今の状態で薬を半分にしたら多分確実に数値はかなり悪くなる、それを元に戻すのがどれだけ大変か私は知っている、という訳で自己判断でしたが過食発作が出た後に、薬は元の量に戻しました。次回内科に伺う時にそれはご報告して、今後のご相談もしなければと思っています。

 

心と躰にたまっていく言い様のないもやもや

 これまた二つ前のエントリーで、いつもかかっている心療内科の主治医にがっつりと「今は体を回復させる時期。仕事とかセカンドキャリアとか、余分なことは  絶  対  に  考えちゃ駄目。いい? 絶 対 だよ、約束したからね」と、強く強く念を押されていることは書きましたが、それに従って「今は自分を甘やかす(自堕落な私が自分に甘くないことなんかないんですけどね…)。余分なことは考えない。だらけていても罪悪感を感じないようにする」と心に決めたのですが、さりとて日課であったお散歩も、大出血の元になったWiiFitも禁止されている今、何か生活の基点というか、リズムがある訳でもなく、なにをどうしていいやら途方に暮れました。

 とりあえず歩く方は整形外科の先生に「15分歩いたら5分休む、というようなやり方ならOK」と言われていますし、友人に歩く前と後のストレッチや、股関節のストレッチが載っているサイトを教えて貰って、股関節痛もかなり良くなりましたし、言いつけ通り15分以上連続して歩くことは殆どしていません。外に出るには暑すぎるのもあって、狭い2Kの部屋の中、丁度廊下状に二部屋続けて真っ直ぐ歩けるようになっている所を、キッチンタイマーで15分設定して、さながら檻の中の熊のようにウロウロ歩くというのは日に何度かはしていますけど、丁度ルート上が真空(まそら)のお気に入りの場所で、しかも私が踏みも蹴りも怒りもしないとわかっている為、人が何度上を跨いでも知らん顔で動く気配もないような事があるので、きっちり時間を決めて「一日何回何時に」という風にやるとことができません。ですから、室内熊歩きは真空が寝ておらず先に歩いた時より5分以上経っている場合のみを見計らって、今だ!とやっている状態です。

 後はこの親がかりの有様の最中にWiiUを入手してしまったので、WiiUにデフォルトでついている(といっても実際に歌うには有料です)、JOYSOUNDの通信カラオケと提携してJOYSOUNDにある物は多分殆ど歌えるようなWiiカラオケ、これが都合良く8/1からキャンペーンで普段30日で1000円(勿論一日何時間歌おうとOK)の利用権が35日1000円になっていたので、速攻35日チケットを購入して部屋でカラオケが出来る状態にしました。

 勿論集合住宅ですからマイクは通さず地声で歌いますけれど(但し全く無駄に58(ハンドマイク)は持って歌ってます)、近所を憚って声を抑えようとすると喉で声を殺すことになり必然的に喉を痛める為、パーンと張った声を出さなければいけないような歌では結構な大声で、隣近所には恐らく聞こえていると思います。特にベランダなんか開けておられるお宅には。うちでも偶にベランダ開けてるとお隣のご夫婦の夫婦喧嘩とか聞こえますし、ベランダ閉まってても壁越しに夜の夜中の赤子の泣き声とか聞こえているので、まぁその辺は、集合住宅でピアノの練習しているご近所さんもいることですし、それに比べれば流石に楽器より響かない人の声ですから、ご勘弁願おうと思って精々思いっきり歌ってます。喉の状態を鑑みて1時間半程度で切り上げることもあれば3時間位歌っていることもあります。一つだけ残念なのはJOYSOUNDよりもDAMの方が宝塚の曲が充実していること位でしょうか。

 超絶インドア派で一ヶ月家から一歩も出なくても生活出来たであろう私が、随分と活動的になった物だと思いますが、一度体を動かす癖を付けてしまうと、動かないでいるとなにかがもやもやとたまっていくような気がするのです。母にも、股関節を痛める前、長距離散歩をしていた時が一番いい顔をしていた、と言われました。確かに私もその自覚があります。ですから代替手段を色々模索中なのです。

 

友人Uからの本当に有り難いアドバイス

 友人Uはもの凄く古くからの付き合いという訳ではありませんが、一緒にいてとても楽かつ和む大好きな人で、沢山してきたであろう苦労をちらとも伺わせない、ある意味でとても達観しているのだろうな、というような人です。ほわんとした印象に反して結構毒も吐くのですが、本人が飄々としている人なので嫌な感じを全く受けません。歌を通じて知り合った友達ですが、決まった場での決まった会話しか出来ない人ではないので、私にとっては「知人」ではなく「大事な友人」の一人です。彼女は拒食も過食も経験したことのある人で、その上一生付き合っていくしかない持病も持っています。その辺りでも話がしやすくて、そういう経験のない人に比して感覚の齟齬が格段に少ない為、この手の悩み事の話がとてもしやすく、相談にも乗って貰っています。

 その友人Uが、過食をどうやって減らしていったかという話を入院中、お見舞いに来てくれた時に語ってくれたのですが、どれだけ食べても満足出来なくて更に食べてしまう、という今の状態は脳の誤作動だと考え、その時その時で、本当に一番食べたい物はなんなのか熟考し、それを与えてあげることで満足感を得るようにする、ということを彼女はしていたそうです。

 兎に角、過食を「なくさなきゃ」「しないようにしなきゃ」=「食べてはいけない」という方向に頭が行っていて、そういうアプローチを全く考えた事がなかったので、なるほどと思い、取り入れさせて貰うことにしました。

 元々私が頼んでいた調整食は、WEB検索で発見した武蔵野フーズという所のすこやか健康膳という奴で、朝と夜の食事と間食二つを付けて全部で1100カロリーになるように計算されているものでした。ただ、糖尿には炭水化物の糖質が格段に数字に響く為、毎食朝晩についてくるご飯は殆ど一口程度食べて後は全て冷凍して実家に持っていって母に消費して貰っていました。

 発注も全てWEBからで、一度営業さんから私の携帯宛に「ヤマト運輸さん経由でなく直接配送出来る地域内だがどうするか」と尋ねる電話がありました。ヤマトさんの方が配達時間の調整がしやすいのでヤマトさんで、とその時はそうお願いして終わったのですが、私の入院中発注の手続きが出来なかったので、数日分の発注を母に頼みました。そうしたところ直接実家に営業の方が見えて、私との電話の時とは違いかなり詳細に色々お話をして下さったようで、例えば不在で直接受け取れなかった時の対応など、色々と都合が効くことが判明しました。

 ので、まず殆ど箸を付けない主食を抜いて貰う、主食抜きコースというのに変更して貰いました。朝にご飯が150gとか私の胃には重すぎましたので、その日のメニューがパンだった時だけ主食にも手を付けると言うことをしていたので、主食用の炭水化物は自身でパンを調達しておくことで解決し、退院後はずっとそれで来ていました。更に、主治医からは術後の腸閉塞やお通じを心配されていたので、これまた別の友人から、彼女の旦那様が手術後お世話になっていたという、ヤクルトのソフールというヨーグルトを勧められ、近所に営業所があったので朝晩の食後に食べられるよう、決まった数を週一で宅配していただく手配をしました。

 で、更に友人Uのアドバイスです。一番食べたいと思った物を自分に与えてあげること。そうすると必然的に調整食の間食が余ります。ですので、更に汁物と間食を抜いた「おかずだけコース」というのに変更をお願いしました。それが数日前のことです。あ、当然ながら何かを間引けばその分値段は安くなってます。

 

「一番」を考えることの難しさと時間帯の罠

 友人Uの教えを実践するに当たって、本当に真剣に朝から「私今日何食べたい?和菓子系?洋菓子系?」というのを考えるようになりました。で、今日はこれだな、という物を例えばコンビニに買いに行きます。そうすると他の物も目に入って迷いが生じます。そこでもう一度「どっちだ、これとこっちならどっちが一番だ」と考えますが、店頭でそうそう長いこと悩んでもいられません。で、結局決められずに二つ買ってきて、片方をおやつ、もう片方を調整食には入っていない昼食にあてる、ということを試みてみました。

 一日二日程度はそれで大丈夫だったのですが、いずれにせよ、「一番を一つだけ」という事が出来た日が今の所一度もありません。そればかりか、これは明日のお昼ね、と置いておいたものを夜になってやっぱり食べてしまうという事態すら発生しました。

 私は寝付きが悪いので、ベッドに入ってから寝落ちるまでにタブレットなどでちょっと何かをみたり、本をパラ見したりする癖があります。その最中に使っている入眠剤が効いてきて眠くなって寝落ちる、というのが普段の眠り方なのですが、私に処方されているマイスリーという入眠剤は、その寝ているか起きているかわからないぼんやりした時間帯に自制心をゆるめ、過食を触発しやすい傾向がある薬と聞いています。ですので、近頃はできるだけ使用しないようにして、自然に寝落ちられるようにするか、もしくは別の睡眠薬を使用するかしているのですけれど、がっつりお散歩していた頃は体が疲れて自然に眠れもしましたが、そうでない今はやはり薬に頼らないと寝付けないことが多く、また中途覚醒ももの凄く多いです。

 その、ベッドに入ってから寝ていない時間、寝付くまでであったり、夜中にふとが醒めたり、そういう時が一番危険なんだというのを知りました。

 実際昨夜、そういう時間帯に、翌日のおやつとして買ってあった物を食べた挙げ句にコンビニに走りましたからね。流石に一番酷かった時のように、買って帰ってきた物を全部一辺に食べない程度の理性は残っていましたが、いずれにせよ、調整食から間食を抜いて自力で調達するようになってから、調整食オンリーだった時よりも、糖質の摂取量は遙かに増えているはずです。体重の上下動はレコーディングしているのでわかりますが、HbA1cの値や血糖値はわかりませんから内科に採血に行くしかないのですけれど、自己判断で薬を半分にしなかったというのは恐らく今の私にとっては正解だったのだろうと思います。

 

先の見えない戦い

 過食の経験がない方からしたら、こういう状態はただ単に自制心や抑制心に欠けている、気合が足りないという風に見えるのだろうと思います。決してそうではないのですが、こればかりは経験のない方(母親含む)に幾ら説明しても判っていただけることではないと諦めています。だからこそ友人Uとその点について語れるのが本当にありがたいのですが、いずれにせよ、今の私の状態は芳しくない言って過言でないでしょう。ただ一つ、友人Uが言った「大丈夫、終わりは来るよ」という言葉だけが今の私の拠です。

 今週の火曜日、12日に慶應精神神経科の再診があります。それに備えて前回の受診からの間に何が起こったかを的確に先生にお話できるようメモを作成し、ご相談しようと思っています。ここ何回かの受診では、私の過食の症状が比較的良かったのもあって、カウンセリングをどうするかという話に終始していたのですが、元々は慶應で一番摂食障害に強い先生だから、というので回された先生です。

 ですので、勿論カウンセリングの要不要もあるでしょうが、最終的に私はこの過食から脱したいので、まずは話はそれこそが先だ、というのを再度心に強く思いました。母とのこじれなんぞ今更どうにもなりませんし、たとえそうした過去に遠因があったとしても、目の前のこの過食を止めたいというのが一番なので、そこを取り違えてはいけないなと再度自分に言い聞かせて次の診察に臨む所存です。

 一番欲しい物を与えてあげることは必然的にそれまでの調整食の間食に比して糖質の摂取量が増えることに繋がってしまいますから、当然採血をすれば状態は悪くなっていると思われるので、そことの兼ね合いをどうするかというのも、とても難しいことだと思います。

 次回診療で、どこまでお話が詰められるかわかりませんが、世間話をしに病院に通っている訳ではないので、医者は万能ではないとは重々承知していながらも、先生に何か良い示唆を頂ければいいなと淡い期待は持っています。折角落とした血液検査の良い数字も体重も、全部水の泡にするのは口惜しすぎますから。